遺言の形 自筆と公正証書

日本生前相続サポートセンターの小山です。先日、遺言のことを書きましたので、きょうはその続き。自筆の遺言について書いてみましょう。

自筆証書遺言は、その名の通り、自らの手で書く遺言です。パソコンは使えません。財産目録についてのみパソコンで打ち出したものが認められていますが、ページごとに押印が必要です。書いた日付が確定できなければならないということはよく知られたことですが、余白の寸法も定められており、紙いっぱいに書けないことには注意です。

さて、形式上のポイントをすべて満たして遺言書が完成したら保管です。このとき家族などに、遺言書を書いたことや置いてある場所を伝えておかないと、いざ遺言書が役に立つはずの場面になって、遺言書があることを誰も知らなかったり、見つからなかったりで意思表示が無駄になってしまいます。しかし、遺言の存在や場所を人に伝えておくことには若干の危険も伴います。自分に不利な遺言であることを何らかの形で知った親族が、破棄や改ざん、隠匿するなどのおそれも、あまり考えたくありませんがゼロではありません。さらに、いざ開封となったら家庭裁判所に検認(開封の儀式だと思ってください)を申し立てなければならず、このとき、こまごまと書類を提出することになります。住所が分からない法定相続人がいる場合も面倒が発生します。大事な人を亡くしてただでさえ大変なのに…結構心配の種がありますね。

そこで活用したいのが、自筆証書遺言書保管制度。法務局で管理してもらうのです。保管申請すると、押印や日付、余白など、形式に適合しているかのチェックもしてもらえます。紛失しないし、改ざんされないし、なんと検認がいらないし、いいことずくめ…ではありますが、法務局でしてくれる「チェック」とは、「外形的な」もの(法務省ホームページより)であって、内容については相談できないので気をつけてください。

例えば、2人の子どもに等分に遺産をと考えて、兄に2000万円相当の不動産を、弟に2000万円の預金をと遺言するのは、一見平等なようですが、問題があります。不動産は税金もかかり、維持管理をしていかなければならないので、兄のほうが、金銭的には損だということ。例えば、保険金の受取人を兄にしておくなど、それ相応の手当ても別に考えておかないと、不平等になってしまうのです。「内容については相談できない」というのは、こうした点については何もアドバイスしてもらえないということです。

手前味噌ですが、やはり、遺言を書くのであれば、私たちのような専門家にお声がけいただけたら防げるもめごとがあるなあ、と思うのです。

次回は、公正証書遺言についてお伝えしてみましょう。

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