日本生前相続サポートセンターの小山です。今回は、さまざまな点で遺言の中でも最も安全とされる公正証書による遺言について書いてみます。
公正証書遺言の最大の特徴は、公証人により作成されること。遺言を作りたい方から私たち行政書士などが聞き取りをして作成した原案を公証人に提出して作成することもありますし、行政書士などを介さずに本人が直接公証人に相談して作ることもできます。わたしたち士業の人間がお手伝いできるだけでなく、公証人も内容の相談に応じてくれます。前回お伝えした自筆証書遺言書保管制度の、内容のチェックを受けられないという落とし穴がありません。
公正証書は、証人2人の立ち合いのもと、公証人が遺言者に読み聞かせる形で完成します。既に紙やデータで存在する原案を公証人がいわば「清書」したものを確認する形になることが多いですが、遺言者が口頭で伝えた内容を公証人が文書にしていくケースもあります。つまり、体や握力が弱り、字が書けなくなった方でも、公正証書なら遺言書が作成できるのです。自筆証書遺言は原則すべて自筆であることが必要ですが、ペンを握ることが難しくなっても作れる遺言書があるわけです。
公正証書遺言は、原本が法務局で保管されます。もしもに備えてデータでも残されます。遺言者には2冊の証書が渡されますので、1冊は自分で、1冊は相続人などに持ってもらうことがスタンダードです。検認はもちろん不要。相続を開始するにあたって、遺言についての手続きは一切いりません。ただし、遺言者が亡くなったとしても、「遺言あります」とお知らせが来るわけではないので、遺言する人は家族などに遺言書が存在していることを伝えておかなくてはなりません。
そして。いつもの話になりますが、遺言書が作れるのは認知症になる前です。元気なうちに、まだまだ早いと思えるうちに、作成しておく必要があります。